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透析のかゆみ ワンポイントレッスン

第2回 かゆみと眠りの関係を知り、上手な不眠対策を 解説:江畑俊哉先生(ちとふな皮膚科クリニック 院長) 江畑俊哉先生 かゆみに悩む透析患者さんの多くが「寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」といった不眠の問題を抱えています。不眠は日中の眠気を引き起こすだけでなく、心身の健康にさまざまな影響を及ぼします。そこで今回は、ちとふな皮膚科クリニックの江畑俊哉先生に、かゆみと眠りの関係や上手な不眠対策についてお聞きしました。

透析患者さんのかゆみが眠りに与える影響をお聞かせください

一般に、かゆみは夜になると強まる傾向があり、不眠の原因の1つとなります。透析患者さんでは約25%に重度のかゆみがあるとされ、その約70%に不眠の症状がみられると報告されています1)
不眠には、(1)寝つきが悪くなる(入眠障害)、(2)途中で目が覚める(中途覚醒)、(3)朝早く目が覚める(早朝覚醒)、(4)睡眠の質が悪い(熟眠障害)という4つのタイプがあります。睡眠環境が適切であるにもかかわらず、これらのいずれかの症状があれば不眠症と診断されます。ただし、睡眠には個人差があるため、本人が苦痛を感じていなかったり、日中の活動に影響がない場合は、必ずしも治療の対象にはなりません。
かゆみによる不眠では、かゆみが原因で寝つけなかったり、目が覚めてしまうといった悩みをお持ちの方が多いと思います。また、睡眠中に無意識に体を掻くこと(掻破行動)も問題となります。体が動くことで眠りが浅くなるほか、皮膚を刺激することでかえってかゆみが強まり、さらに不眠を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。

1) Narita I. et al. : Kidney Int. 69(9): 1626, 2006

不眠が続くとなぜよくないのでしょうか

不眠は日中の眠気や倦怠感を引き起こすだけでなく、心身にさまざまな影響を及ぼします。
不眠が長引くと、不安や抑うつ感を感じやすくなるほか、高血圧や糖尿病、心疾患といった生活習慣病のリスクが高まることも明らかになっています。透析患者さんでは、糖尿病など合併症をお持ちの方も多いですが、不眠によりそれらの病気を悪化させてしまう可能性があるのです。
また、かゆみによる不眠では、眠れないストレスが原因で体を掻いてしまい、かゆみが強まって、さらに眠れなくなるという悪循環に陥る場合があります()。かゆみや不眠の症状がある場合は放置せず、早めに対策を行うことが重要と言えるでしょう。

図:かゆみ・掻破、ストレス、睡眠障害の悪循環

図:かゆみ・掻破、ストレス、睡眠障害の悪循環

かゆみによる不眠には、どのような対策があるのでしょうか

まず、かゆみそのものの治療が第一となります。一般的な流れとしては、保湿剤などによるスキンケアを行いつつ、抗ヒスタミン薬やステロイド外用剤、オピオイドカッパ受容体作動薬といった薬による治療を行っていきます。透析膜や透析方法の変更が有効な場合もあります。
また、かゆみ治療と並行して、睡眠習慣を見直すことも大切です。かゆみのせいで眠れないと思っていても、実は生活習慣の中に睡眠を妨げる要因があるかもしれません。例えば、「夜眠れないから」といって早い時間から布団に入ると、夜間に目覚める原因となります。厚生労働省の研究班が発表した「睡眠障害対処12の指針」()などを参考に、睡眠習慣を見直してみましょう。
これらの対策をしっかり行ってもかゆみが解消しない場合は、睡眠薬の服用を検討します。睡眠薬はかゆみによる不眠にも有効とされますが、一方で夜間の掻破行動の抑制にはつながらないとの報告もあり2)、やはりかゆみの治療は重要と言えます。また、副作用として眠気を生じる抗ヒスタミン薬などを睡眠薬代わりに服用する方もいますが、日中に眠気が残るなど問題も多いため、避けた方がよいでしょう。

2) Ebata T. et al. : Br J Dermatol. 138(4): 631, 1998

表:睡眠障害対処12の指針

表:睡眠障害対処12の指針

透析患者さんとご家族へのメッセージをお願いします

透析のかゆみは治らないから、夜眠れなくても仕方がないとあきらめてしまう透析患者さんもいらっしゃいますが、不眠は精神的にも身体的にもさまざまな悪影響を及ぼします。また、不眠の原因に「むずむず脚症候群」や「睡眠時無呼吸症候群」といった別の疾患が存在している場合もあるので、遠慮せず医師や看護師などに相談してください。また、ご家族にはかゆみのつらさを理解し、患者さんに寄り添って、一緒に対処法を考えていただきたいと思います。

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